インビザライン矯正に限らず歯列矯正において、歯を移動させるためのスペースを確保することが大切です。インビザライン矯正では、歯の表面を薄く削ることでスペースを確保するということが度々あります。その必要性や目的などを紹介していきます。
1. インビザライン矯正で歯を削る処置がある?
インビザライン矯正には歯を削る処置があります。この処置をディスキングまたはIPR(Interproximal Enamel Reduction)と言い、「隣接面の切削」という意味合いになります。インビザライン矯正に限らず、ワイヤー矯正においても行われることがあります。
2. ディスキング(IPR)を行う目的
歯を動かすためのスペースを確保するためにディスキング(IPR)を行います。
ディスキングで削るのは歯の一番表面にあるエナメル質です。エナメル質は1~2ミリ程の厚さがあり、ディスキングによって0.25~0.5ミリ程度を削り落とします。
ここで皆さんが心配になるのが、「痛み」だと思います。痛みを感じるのは神経と神経の部屋に繋がっている象牙質です。エナメル質だけをほんの少し削るこの処置で痛みを感じることはありません。ですので、麻酔を使用することなくディスキングを行うことができるのです。
4. ディスキング(IPR)を行うタイミング
インビザラインのシミュレーションを踏まえ、歯科医師がディスキングのタイミングを決定します。歯並びが複雑に重なっている場合などは切削が難しくなるので、適宜タイミングをみて複数回行うこともあります。
5. ディスキング(IPR)のメリット
ディスキング(IPR)のメリットをご紹介します。ディスキング(IPR)のメリットをご紹介します。
5-1. 歯を抜かずに必要なスペースを確保できる
ディスキングの最大のメリットは、非抜歯で歯を動かすスペースを確保することができるということです。(症例によっては抜歯が推奨されることもあります)
また、虫歯治療後のかぶせ物が入っている場合は、かぶせ物を削ることによって天然歯のダメージを最大限に抑えることも可能です。
5-2. 歯の形やサイズ、全体のバランスを整えることができる
人間は左右非対称な作りであることが多いですが、口腔内でも同じことが言えます。歯の左右差をディスキングにより整えることが期待できます。
5-3. ブラックトライアングルの改善が期待できる
歯は逆三角形の形をしているため、ディスキングで隣接面を切削することによりブラックトライアングルが消失、またはブラックトライアングルの範囲が狭まることが期待できます。
5-4. 矯正後の後戻り防止
ディスキングを行うことにより、歯の接触面が点から面に変わるため歯列矯正治療後の後戻りがしにくいと言われています。※後戻り防止しのためにはリテーナーの継続が最重要です。
6. ディスキング(IPR)のデメリット
6-1. 健康な歯を削らなければならない
歯を動かすスペースを確保するために、健康な歯であってもディスキングの対象となります。
6-2. 確保できるスペースには限界がある
エナメル質を薄く削ることで安全性と審美性を確保しているため、全体的なスペース確保には限界があります。
6-3. 措置中の圧迫感や出血の可能性
歯と歯の間に器具を挿入しディスキングを行うため、強い圧迫感を感じることがありますがこれは一過性であることがほとんどです。また、歯肉炎などを起こしているとディスキングの刺激により出血することがあります。
7. まとめ
手軽に始めることのできるイメージのあるインビザライン矯正ですが、歯列矯正の一種であることには変わらず歯の移動スペースの確保が非常に大切になってきます。
歯列矯正を検討される方は、見た目的な意識もより高いように思います。ですから、ブラックトライアングルの面積の減少や、歯のバランスが整うというのは非常に大きなメリットになるのではないのでしょうか。
また、健康な歯を削ることに不安を感じている方もいれませんが、ディスキングは基本的には痛みは伴わない処置です。より美しい歯並びを手に入れることにより、歯の清掃性が高まれば歯の健康度の上昇、維持が期待できます。
矯正治療が終わったときに「頑張ってよかった」「やってよかった」と思えるようにしたいですね。