リンガルアーチは、矯正治療においてさまざまな役割を果たします。リンガルアーチとはどういうものなのか、またリンガルアーチの効果や期間、メリット・デメリットなども紹介していきます。
1. リンガルアーチとは
リンガルアーチとは、別名「舌側弧線装置」ともいい、文字通り、舌側(歯の裏側)に装着する装置です。主に、歯が生え変わる時期や顎の骨の成長を促すための治療として使われます。
装置は固定式で外れないようにします。奥歯部分に、バンドという金属の輪っかを固定し、装置を維持します。リンガルアーチを使用する目的はさまざまなので次の項目で説明しますが、一度に多数の歯を動かすことは出来ませんので、“数本の歯のみ移動が可能”という特徴があります。
また、移動できる量も少ないため、1本または数本の歯を2~3mmの範囲で移動可能な場合に使用する装置です。装置の構造としては、奥歯のバンド以外にワイヤーが付与されますが、動かしたい歯の本数や場所によってワイヤーの本数、長さ、高さは変わります。
2. リンガルアーチの目的
- 歯を動かすときに、奥歯が動かないよう固定しておくために。
- 前歯を裏側から押し出す、あるいは引っ張るときの土台として。
- 乳歯から永久歯へ生え変わる時の隙間を確保しておくために。
- 奥歯を部分的に後方や舌側に動かすために。
- 他の矯正装置を使用する際の固定源として。
- 埋伏している歯を引っ張る際の土台として。
このように、さまざまな目的で使用されるのがリンガルアーチです。
患者さんの歯並びに合わせてオーダーメイドで作成するため、さまざまな症例に対応することができます。
3. リンガルアーチの費用と治療期間
治療期間は歯並びによってかなり個人差がありますが、通常の矯正治療と同じく、平均では半年〜1年程度です。例外として、乳歯から永久歯へ生え変わる時の隙間を確保しておくために使用される場合は期間が変わります。
乳歯が早期に喪失してしまい、永久歯が生えてくるまでに前後の歯が隙間に移動してしまうのを防ぐ目的で使用される場合は、永久歯の萌出を待つ必要があるので装置の装着が数年に及ぶ場合もあります。ただし、この場合も永久歯の萌出スピードによって期間が変わります。
また、費用に関してはリンガルアーチに別途費用がかかってくるのではなく、あらかじめ矯正費用の中に含まれていることが多いです。お子様の第一期の治療費が平均30万〜50万円ですので、リンガルアーチもその費用の中に含まれていることがほとんどです。
4. リンガルアーチのメリット・デメリット
比較的簡単な装置にもかかわらず、様々な用途に使える点がリンガルアーチの最大のメリットです。動かせる範囲や量は少ないですが、奥歯にバンドを固定し、ワイヤーを付与するだけの装置で部分的な歯並びの乱れにアプローチすることが可能です。
デメリットとしては、
- 奥歯や裏側に装置があるため、歯磨きがしにくい
- 舌が当たり発音しにくい、違和感や痛みがある
- 取り外しができない
という点が挙げられます。
リンガルアーチは固定式で取り外しができないため、日常的な歯磨きが非常に重要です。特に、奥歯に固定するバンドの周りは汚れが溜まりやすく歯肉炎を引き起こしやすいです。バンドと歯に隙間が生じてしまうと、隙間に溜まった汚れによって虫歯ができてしまう可能性もあります。バンドが緩んだり、何か違和感があるようでしたらすぐに歯科医師に相談しましょう。リンガルアーチのみならず、矯正治療中はお子さんだけの歯磨きでは十分に汚れを除去するのが難しいので、親御さんの仕上げ磨きが非常に重要です。
また、リンガルアーチは歯の裏側に装着するため装着直後は違和感や痛みを感じやすいです。発音がしにくくなる場合もありますが、大体2週間ほどで慣れてきますのであまり心配されなくても問題ありません。
5. リンガルアーチ装着中のブラッシング
リンガルアーチを装着すると歯磨きが難しくなります。
そこで親御さんの仕上げ磨きの際におすすめなのが、「ワンタフトブラシ」という毛先の部分が非常に小さい歯ブラシです。特に、奥歯のバンド部分は大きい歯ブラシは当たりにくく磨き残しが起こりやすいのでワンタフトブラシの使用がオススメです。
なるべくデンタルフロスも併用するようにしましょう。磨きにくいから、難しいからという理由で歯磨きが疎かになるとあっという間に虫歯や歯周病になってしまいます。矯正治療中に虫歯だらけになってしまわないよう日頃から歯磨きを丁寧に行うようにしましょう!
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